代表医師の中嶋です。
私は日本認知症学会の専門医および指導医資格を有し、認知症ケアチームのリーダーとしても日々、認知症患者さんの診療を担当しています。
私への依頼は、主に医療過誤、あとは交通事故・労災での高次脳機能障害に関する内容がメインです。それは現在も変わりません。
ただ、数年前から、遺言有効・無効を争う事案の相談が徐々に増えてきました。
今回は【遺言能力】の有無を争う事案において、専門医に鑑定を依頼する際、弁護士の先生方に収集していただきたい資料について解説します。
専門医に【遺言能力】を正しく鑑定してもらうために、どのような資料が必要なのか、すぐに役立つチェックリストも大公開するので、ぜひ最後までお読みください。
■はじめに
近年、遺産相続(遺産分割)の裁判件数は増加傾向にあります。
平成20年度の10,202件から、平成30年度には13,040件と28%も増加しているのです。
(裁判所 司法統計)
遺産相続の紛争では遺言発効後(遺言者の死後)における遺言の有効性が争点となります。
私への相談案件は、遺言の有効性を左右するのが認知症の例です。
認知症の鑑定であっても、確認すべき医療記録は、医療過誤や高次脳機能障害の案件と大きな違いはありません。
ただ、認知症の場合は重症度の判断が重要となります。
そのため、医療記録のなかでも、この内容が含まれていないと認知症の有無、重症度の判断が困難となるものがいくつかあります。
それらについて、次項から順に解説します。
■診療の記録
主治医および認知症診断のために受診した医療機関の診療録が必要です。
この場合の主治医とは、遺言作成時よりも前から定期的に遺言者を診察していた医師のことを指します。
主治医の判断は医学的見地のなかでも最重要です。特に遺言作成前後の記録は必須といえます。
■看護/介護記録
入院歴や訪問看護歴があれば、看護記録を入手します。
施設に通所あるいは入所中であれば、介護記録も大切な資料です。
■介護認定の関連書類
介護認定に必要な主治医意見書は、できるだけ過去のものから最新のものまで集めます。
通常は、診療録に主治医意見書のコピーが保存されています。
また、認定調査票も日常生活の様子を伺い知ることができるので大変参考になります。入手方法は各自治体へ確認しましょう。
■各種検査結果
認知機能のスクリーニング検査として、
・HDS-R(改訂長谷川式認知症スケール)
・MMSE(ミニメンタルステート検査)
がわが国で広く用いられています。
どちらか一方でもかまいません。
これらの検査は、経時変化の把握が重要です。
そのため、できるだけ多くの検査結果を入手しましょう。
画像検査としては、
・頭部CT
・頭部MRI
が必要です。特に頭部MRIは認知症の病型診断でも参考になります。
画像検査の結果も、上のスクリーニング検査と同様、経時変化の把握が重要なので、できるだけ過去から最新の分まで収集しましょう。
■まとめ
今回は、遺言能力の鑑定に向けて、弁護士の先生方に収集していただきたい資料を解説しました。最後にまとめとして、すぐに使えるチェックリストを添付します。
遺言能力の鑑定は、いかに資料を集められるかが勝負といえます。
上のチェックリストをご活用いただけたらうれしいです。
遺言能力に関する鑑定のご相談は、
いつでもお気軽に「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください。
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