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未破裂脳動脈瘤の2.7%で過去に出血あり

(2021.3.15)

代表の中嶋です。


今回は,日本脳神経外科コングレスの機関誌「脳神経外科ジャーナル」の最新号(2021年30巻3号)から,興味深いと思った論文をご紹介します。


タイトル:『未破裂脳動脈瘤患者における無症候性出血(silent hemorrhage)についての研究』


著者:松崎粛統,赤須功,田中将大ら


脳神経外科ジャーナル(Jpn J Neurosurg (Tokyo) )30: 224-229, 2021


この研究の内容を簡単にまとめると,「未破裂脳動脈瘤と思って手術をしてみたら,2.7%の例で出血の痕跡を認めた。」というものです。


著者らは,前方循環,つまり,内頚動脈,前大脳動脈,前交通動脈,中大脳動脈の未破裂脳動脈瘤に対してクリッピング術を行った300例を調査したそうです。


術前のMRI検査で,微小出血の所見を認めないことも確認しています。

くも膜下出血に特徴的な突然の激しい頭痛を認めた例は,調査対象に含まれていません。


調査の内容は,手術所見で無症候性出血(silent hemorrhage)をどのくらいの例で認めたのか,というものです。


このsilent hemorrhageについて,著者らは,次のいずれかに該当するもの,と定義しています。


①動脈瘤のbleb(ブレブ:動脈瘤のドームに見られる血豆状の小さな膨らみ)にhemosiderin(ヘモジデリン)沈着を認める。

②動脈瘤の周囲に出血のくも膜組織にhemosiderin沈着および癒着を認める。


hemosiderin(ヘモジデリン)とは,血液のヘモグロビンに由来する黄褐色あるいは褐色の色素です。

つまり,hemosiderin(ヘモジデリン)沈着があれば,手術所見で黄褐色あるいは褐色に見えるのです。


調査の結果,300例中8例(2.7%)の動脈瘤にsilent hemorrhageが発見されたそうです。8例のすべてで動脈瘤のblebを認めたとのことですが,術前の画像検査(3D-CTA:CTを用いた血管造影検査で3次元的に血管構造を把握できる)では,2例しかblebを確認できなかったとしています。


この調査によって,症状や術前画像検査で「未破裂脳動脈瘤」と診断された例のなかに,じつは,すでに出血したもの,つまり,「破裂脳動脈瘤」もある,ということが示されたのです。動脈瘤blebは,出血の危険性があるといわれています。しかし,blebがあまりにも小さければ,術前画像検査でも発見することができません。しかも,本研究によれば,小さいblebからごく少量の出血を起こしている可能性もあるのです。


脳動脈瘤は,一度でも出血していれば,当然,同じ場所から再出血する危険があります。

著者らが,論文の最後で述べているように,今後,silent hemorrhageを検出できる画像診断技術の開発が望まれます。


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