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重症頭部外傷ガイドライン第3版の要点


 今回は、我が国の重症頭部外傷ガイドラインをご紹介します。

 重症頭部外傷ガイドラインは脳神経外科医が中心メンバーである日本脳神経外傷学会ガイドライン作成委員会により発行されています。

 正式名称は、「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン」といいます。

 初版は2000年に発行され、2006年に第2版、2013年に第3版が発行されました。

 改訂では、旧版を踏襲しながら新たな知見を取り入れています。

 そこで、2013年に発行された最新の第3版においてアップデートされた内容を挙げて解説したいと思います。

(参考文献 前田ら:重症頭部外傷ガイドライン2013アップデート.脳神経外科ジャーナル 22: 831-836, 2013)

1.推奨レベルを6段階から3段階へ簡素化した

 第2版までは、推奨レベルを6段階としていましたが、第3版からは、

「行うように勧められる」

「行うことを考慮してもよい」

「行うことは勧められない」

の3段階となり、現場の医療者は判断しやすくなりました。

2.中等症・重症を対象とした画像診断についての章が追加された

 この追加された章では、

中等症・重症頭部外傷の初期治療で第一選択とする画像診断法はCTである

と明記されています。その理由は、CTの安全性、迅速性、経済性とともに、頭蓋内血腫(つまり出血)、脳の形態的異常、頭蓋骨骨折などの診断における感度・特異度が高いことが挙げられます。その一方、MRIを第一選択としない理由は、高磁場の検査室では分厚い扉によって完全に遮蔽して検査を実施するため、バイタルサインのモニタリングが困難なことや、検査中の急変時に迅速な対応が困難であることが挙げられます。

3.軽症・中等症の頭部外傷への対応

 軽症・中等症の頭部外傷の定義は、軽症をGlasgow Coma Scala (GCS) 13-15, 中等症をGCS 9-12としています。しかし、ヨーロッパの一部において、GCS 13は、頭蓋内病変を認め、開頭術が必要となる頻度が高いとして、軽症ではなく中等症と定義しています。そのため、本邦のガイドライン第3版では、軽症頭部外傷をカテゴリー 0-3の4段階に分類して、カテゴリー 0ではCT不要、カテゴリー 1ではCT推奨、カテゴリー 2と3はCT必須とされています。これを簡単に言うと次のようになります。

GCS 15でCT不要なのは、

  • 意識消失なし

  • 外傷性健忘なし

  • 次のいずれも認めない

  受傷歴不明

  持続的健忘

  外傷後健忘>30分

  頭蓋骨骨折の徴候

  頭痛

  嘔吐

  局所神経症状

  痙攣

  年齢<2歳

  年齢>60歳

  凝固障害

  高エネルギー外傷

  アルコール中毒

  薬物中毒

 つまり、GCS 15であっても、上記の事項をすべて確認する必要があるとされています。確認すべき症状として、頭痛も含まれています。頭部を打撲したら打撲部の痛みを伴うと思うので、それなら、さっさとCT検査を行ったほうが早いという意見も出そうですが・・・。なお、GCS 15でも嘔吐を認めるものは、有意に頭蓋内血腫の発生率が高いという報告もあるので特に注意が必要です(塩見ら:軽症頭部外傷患者の初療指針に関する検討.Neurol Surg 32: 465-470, 2004)。

補足)

重症頭部外傷治療・管理のガイドラインの使用状況について、日本脳神経外科学会専門医訓練施設のなかでも、ある程度の症例数を有している施設に行ったアンケート調査の結果が報告されています (末廣ら:神経外傷は誰が担っているのか?:日本の神経外傷治療の実状.神経外傷 32: 25-31, 2009)。このアンケートが実施された当時のガイドラインは第2版でした。アンケートの結果は、大学病院を含む三次救急施設で、ガイドラインに準拠していると回答した施設は81%、準拠していない理由としては、マンパワーの不足 50%、設備が不足している 19%、意義を感じない 12%となっています。

まとめ

 頭部外傷に関連した事案をご担当の弁護士の皆様は、ぜひ一度、「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン第3版」をお読みいただければと思います。もしガイドラインの内容でご不明な点や、臨床でのガイドラインの運用に関してご質問があれば、遠慮なく私どもへご連絡ください。詳しく解説いたします。

 今後も弁護士の皆様にとって有用と思われる情報を発信していきたいと思います。よろしくお願いいたします。


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