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抗凝固療法中の患者が脳梗塞を発症した場合の急性期再開通治療について


日本脳卒中学会の機関誌「脳卒中」の最新号(第40巻第2号 2018年3月25日)において,「抗凝固療法中患者への脳梗塞急性期再開通治療に関する推奨2017年11月」(以下「推奨」といいます)が掲載されました。

 この推奨は,日本脳卒中学会の脳卒中医療向上・社会保険委員会「抗凝固療法中患者への脳梗塞急性期再開通治療に関する推奨」作業部会が作成したものです。

 実臨床では,抗凝固療法中,つまりワルファリンやその他の抗凝固薬を服用中にもかかわらず,脳梗塞を発症する例は決してまれではありません。脳梗塞急性期の再開通治療としては,rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法が普及しています。また,機械的血栓回収療法もわが国で実施されるようになりました。抗凝固療法中の患者に対するrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法や機械的血栓回収療法に関して,今回の推奨の要点を以下にまとめます。

ワルファリン服用患者について

・プロトロンビン時間の国際標準比(PT-INR)が1.7を超えている場合は,アルテプラーゼ静注療法の適応外とみなす。

・ワルファリンの中和薬であるプロトロンビン複合体製剤を用いて,PT-INR値を是正した後に,アルテプラーゼ静注療法や機械的血栓回収療法を行うことは推奨されない。

(中和薬は血液凝固能を高めて脳梗塞の病態を悪化させる可能性があるため)

ヘパリン投与患者について

・活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が前値の1.5倍(目安として約40秒)を超えている場合,アルテプラーゼ静注療法の適応外とみなす。

・ヘパリンの中和薬である硫酸プロタミンを用いて,aPTT値を是正した後に,アルテプラーゼ静注療法を行うことは推奨されない。

(中和薬は血液凝固能を高めて脳梗塞の病態を悪化させる可能性があるため)

ダビガトラン服用患者について

・aPTTが前値の1.5倍(目安として約40秒)を超えている場合,アルテプラーゼ静注療法の適応外とみなす。

・ダビガトランの最終服用後4時間以内であることが確認できた場合には,aPTTの値にかかわらずアルテプラーゼ静注療法の適応外とみなす。

(ダビガトランの最大血中濃度到達時間は1~4時間であることが理由)

・上記2項目で適応外とみなされた場合も,ダビガトランの特異的中和薬であるイダルシズマブを用いた後にアルテプラーゼ静注療法を行うことを考慮してもよい。ただし,機械的血栓回収療法を施行できる施設において同療法を優先的に行うことを考慮してもよい。

活性化凝固第X因子阻害薬服用患者について

・活性化凝固第X因子阻害薬(抗Xa薬:リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン)を服用中で,PT-INRが1.7を超えている場合や,aPTTが前値の1.5倍(目安として約40秒)を超えている場合,アルテプラーゼ静注療法の適応外とみなす。

・抗Xa薬の最終服用後4時間以内であることが確認できた場合には,PT-INRやaPTTの値にかかわらずアルテプラーゼ静注療法の適応外とみなす。

(抗Xa薬の最大血中濃度到達時間は1~4時間であることが理由)

ダビガトランや抗Xa薬の半減期が12時間前後であることを考えれば,最終服用後4時間を過ぎても,その後,半日程度までは,アルテプラーゼ静注療法の有効性が危険性を上回るかを特に慎重に判断すべきである。

抗凝固療法中の患者への機械的再開通療法は,その有効性が危険性を上回るかを慎重に判断した上で,各デバイスの添付文書に従って施行することが推奨される。

(血栓回収機器の中には,添付文書でaPTTが標準の2倍以上に延長している患者は禁忌とされているものがある)

以上です。

 今後も弁護士の皆様にとって有用と思われる情報を発信していきたいと思います。


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