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神経内視鏡の血腫除去術


医学鑑定 医療事故

(2022.6.19)


代表医師の中嶋です。


今回も神経内視鏡手術の解説です。


脳出血の治療として多くの施設で行われるようになってきている、脳出血に対する神経内視鏡治療について、前回よりも少し詳しく解説します。



脳出血に対する頭蓋内血腫除去術


高血圧によって脳出血を起こした場合、基本的には保存的治療が選択されます。


出血によってダメージを受けた脳損傷は手術によっても改善しないことから、手術が選択されるのは「血腫によって命の危機に瀕している時」になります。


脳出血手術による「機能予後の改善」つまり「命の危機に瀕していない脳出血に対して手術をしたことで神経症状がよくなること」を示したエビデンスレベルの高い報告はなく、現時点での脳出血治療の限界といえるでしょう。


高血圧性脳出血に対して救命目的の手術が行われるのは以下の場合です。


  1. 被殻出血: 中程度の神経症状があり血腫量が31 ml以上かつ血腫による圧迫所見が高度な場合

  2. 皮質下出血:脳表からの深さが1 ㎝以下の場合

  3. 小脳出血: 最大径が3 ㎝以上で神経学的症候が急増している場合または脳幹を圧迫し閉塞性水頭症をきたしている場合

  4. 脳室内出血:閉塞性水頭症が疑われるもの

脳卒中治療ガイドライン2021 改変


これらのうち、特に被殻出血と皮質下出血、小脳出血に対して、神経内視鏡を用いた頭蓋内血腫除去術が行われます。


神経内視鏡を用いた頭蓋内血腫除去術は2014年から保険収載され、広く行われる手術手技になってきました。


近年ではできるだけ患者さんに負担をかけずに済むように、脳出血患者に対する第一選択の手術としている施設も多く見られます。


数多く行われる手術になってきている現在だからこそ、安全な内視鏡手術を施行するにあたっては「適切な症例を選択すること」が重要になっています。



被殻出血に対する神経内視鏡手術


では、実際の神経内視鏡手術の手順について、被殻出血を例にご紹介いたします。


血腫がある側の前頭部に4 ㎝ほど皮膚を切開し、2 ㎝大ほどの穿頭(頭蓋骨に穴をあけること)を行います。

その穴から透明な「シース」と呼ばれるやや太いチューブを脳に刺して血腫までの道筋を作ります。



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シースの中を通して、神経内視鏡と吸引器ないし止血用の器具を血腫の中に入れ、少しずつ血腫を取り除いていきます。


血腫がなくなった後、出血している部分がないかどうかを十分に確認して手術を終了します。


この流れを基本として、病院によってはナビゲーションシステムを使って手術を行うなど、より安全で確実な手術を行うべく工夫をしています。


神経内視鏡手術と開頭血腫除去術の優劣


現在の脳卒中治療ガイドラインでは、開頭血腫除去術と神経内視鏡手術のどちらが優れた治療結果となるかについての結論は出ていません。


そのため患者さんごとに安全性・有用性が高く治療できる手術方法が選択されています。


また、神経内視鏡手術だけでは治療困難と判断した場合、手術中に開頭手術に切り替えることも日常的に行われています。


最近の報告では、神経内視鏡手術では開頭手術と比較して死亡率や再出血率が低く予後がよいのではないかという論文もいくつか出てきていますが、現状では症例数が少ないなどの問題点があり一般的にはなっていません。


現在多施設共同研究が進んでいますので、その結果によっては今後神経内視鏡手術が開頭手術よりも良い結果となるかもしれません。今後の報告が期待されます。


脳出血に対する神経内視鏡手術


今回は神経内視鏡手術を使った手術の一例として、高血圧性脳出血に対する神経内視鏡手術について簡単にまとめました。


現在進行形で研究、手術手技の向上が図られている分野であり、脳神経外科手術の中でも非常に注目されている分野の一つになります。


今後の研究の結果によっては一気に脳出血治療の第一選択となる可能性もあり、しばらくは目が離せない状況が続きそうです。


今後も日々情報をアップデートし、最新の知見も含めてわかりやすくお伝えしていきます。



【参考文献】

  1. Jianhua X, Zhenying H, Bingbing L, et al. Comparison of Surgical Outcomes and Recovery of Neurologic and Linguistic Functions in the Dominant Hemisphere After Basal Ganglia Hematoma Evacuation by Craniotomy versus Endoscopy. World neurosurgery. 2019;129:e494-e501.

  2. Xu X, Chen X, Li F, et al. Effectiveness of endoscopic surgery for supratentorial hypertensive intracerebral hemorrhage: a comparison with craniotomy. Journal of neurosurgery. 2018;128(2):553-559.


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