交通事故後の高次脳機能障害評価 - 専門医選びの重要性
- 医療鑑定研究会 中嶋浩二
- 3月1日
- 読了時間: 4分
更新日:3月7日
【高次脳機能障害に詳しい医師を選ぶ重要性】
交通事故の後遺障害等級で評価が特に難しい障害の一つが高次脳機能障害です。
この複雑な障害に直面したとき、多くの弁護士の先生方は専門医の意見を求めることになるでしょう。
では、どのような医師に相談すべきなのでしょうか?

脳外科専門医だけでは不十分な理由
単に「脳外科専門医」という肩書きだけでは不十分かもしれません。
なぜなら、高次脳機能障害の臨床経験が豊富とは限らないからです。
後遺障害が固定するまでの診療期間の重要性
高次脳機能障害が後遺障害として固定するまでには通常6ヶ月を要し、この期間を通して患者を診療し続ける医師でなければ、真に価値ある知見を提供できません。
適切な相談先となる医師の条件
そこで最適な相談先となるのが、「脳外科専門医」であり「リハビリテーションに携わる医師」という二つの条件を満たす専門家です。
このような医師こそ、交通事故による高次脳機能障害の評価において最大の強みを発揮します。
【画像所見と臨床所見の乖離 - 認定基準の限界】

自賠責保険の認定基準と臨床知見の違い
交通事故による高次脳機能障害の後遺障害認定では、自賠責保険の判断が臨床現場の知見と一致しないケースが少なくありません。なぜでしょうか?
微小な脳損傷と重度の障害発生の関係
自賠責保険の認定基準では、頭部外傷後の画像所見が最重視されています。しかし、最新の研究は微小な脳損傷でも重大な高次脳機能障害を引き起こすメカニズムを明らかにしつつあるのです。
実際の臨床では、MRIで検出される脳損傷が微細で、事故直後の意識障害が軽度であっても、日常生活に深刻な支障をきたす高次脳機能障害が発生することがあります。
さらに残念なことに、専門的で集中的なリハビリテーションを受けても回復が頭打ちとなり、社会復帰が困難になるケースも珍しくありません。
このような臨床と認定基準のギャップを説得力をもって説明できるのは、高次脳機能障害のリハビリテーションに直接携わる脳外科専門医をおいて他にはいないのです。
【神経心理学的検査の評価 - 専門的知見の重要性】
検査結果を深く理解できる専門医の希少性
高次脳機能障害の診断において神経心理学的検査は不可欠ですが、これらの検査結果を深く理解し解釈できる脳外科専門医は極めて少数です。なぜこれが重要なのでしょうか?
適切な検査の選択と実施タイミングの重要性
神経心理学的検査は、単に実施すればよいというものではありません。
事前に明確な目的を設定し、患者の状態や利用可能な時間に合わせて、どの検査をどのような順序で行うかを慎重に決定する必要があります。
また、検査のタイミングも極めて重要です。
急性期の検査だけでは不十分であり、リハビリテーション期間中も継続的に評価することで、高次脳機能障害の詳細な把握が可能になります。
どの検査をいつ実施するかは、リハビリテーションを総括する医師、療法士、看護師など多職種によるカンファレンスで決定するのが一般的です。このような臨床経験を持つ医師だからこそ、複雑な神経心理学的検査の結果について的確な見解を提供できるのです。
【高次脳機能障害の診療に携わる脳外科専門医としての使命】
専門医としての知見を活かした事件解決支援
私はリハビリテーション専門病院で常勤医として勤務する脳外科専門医として、日々、高次脳機能障害を抱える患者さんの診療に携わっています。同時に、交通事故後の後遺障害等級に関する紛争で専門的見解を必要とする弁護士の先生方からの相談にも応じています。
2024年には21件の高次脳機能障害に関連した案件を担当しました。これからも臨床経験に基づく知見を活かし、事件解決のお手伝いをしていきたいと考えています。
高次脳機能障害の後遺障害等級認定には、専門的な知見が不可欠です。
当会の評価についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
弁護士の先生方にて後遺障害等級に関するご相談がありましたら、お気軽にご相談ください。
Comments