アルツハイマー病が血液検査でわかる?最新のp-tau217検査とは【専門医解説】
- 医療鑑定研究会 中嶋浩二

- 1 日前
- 読了時間: 5分

いま、アルツハイマー病の診断に革命が起きようとしています。
これまで脳の異常を調べるには、高額な検査や体に負担のかかる検査が必要でした。
しかし最新の研究により、血液で精度の高い診断ができる可能性が示されたのです。
今回は、認知症専門医の視点から、日本人を対象とした最新の研究論文(J-ADNI研究)をもとに、未来の認知症診断について分かりやすく解説します。
■ 血液検査でここまでわかる!アルツハイマー病診断の新常識
認知症の約7割を占めるアルツハイマー病は、発症する20年以上前から脳内に「アミロイドβ」というタンパク質が溜まり始めることが分かっています 。
これまでは、このアミロイドβの蓄積を調べるために、高額な検査(PET検査)を行ったり、背中に針を刺して脳脊髄液を採取したりする必要がありました 。
こうした検査は、患者さんの体への負担が大きく、また高度な設備を持つ一部の病院でしか受けられないという課題があったのです 。
しかし、今回ご紹介する最新の研究では、「p-tau217(リン酸化タウ217)」という血液中の成分を測定することで、これまでの大がかりな検査に匹敵する精度で診断できることが証明されました 。
J-ADNIという日本人を対象とした大規模な調査の結果、血液中のp-tau217の数値を測るだけで、従来の方法による脳脊髄液の検査結果を約98%という驚異的な的中率で予測できたのです 。
これは、普通の健康診断と同じような採血だけで、アルツハイマー病のリスクを早期に、かつ正確に把握できる時代がすぐそこまで来ていることを意味しています 。
専門医としても、この技術が普及すれば、より多くの患者さんに適切なタイミングで治療や予防の機会を提供できると確信しています 。
■ 「p-tau217」が示す驚きの精度と未来の予測能力
なぜ、数ある血液成分の中でも「p-tau217」がこれほど注目されているのでしょうか 。それは、この成分がアミロイドβの蓄積だけでなく、病気の進行度までも敏感に反映するからです 。
今回の日本人を対象とした研究では、米国のFDA(食品医薬品局)で承認された最新の検査機器を用いて分析が行われました 。
その結果、p-tau217の数値が高い人は、将来的に軽度認知障害(MCI)から認知症へと進行するリスクが有意に高いことが明らかになったのです 。
つまり、現在の状態を診断するだけでなく、「将来、認知機能がどれくらい低下しやすいか」という予測まで可能になるということです 。
さらに、今回の研究では日本人に特有の遺伝的背景(APOE遺伝子など)も考慮されましたが、遺伝子に関わらずp-tau217は極めて正確に脳の状態を反映していました 。
欧米人での研究データは多くありましたが、日本人でもこれほど高い精度が得られたことは、私たち日本の医療現場にとって非常に大きな一歩と言えます 。
健康診断のオプションとしてこの検査が受けられるようになれば、自覚症状が出る前の「プレアルツハイマー」の状態で見つけることも夢ではありません 。
早期発見ができれば、生活習慣の改善や、最近承認された新しい治療薬の効果を最大限に引き出すことができるようになります 。
■ 検査を受ける前に知っておきたい!数値に影響を与える意外な要因
夢のような血液検査ですが、注意点もいくつかあります。血液中の成分は、全身の健康状態に影響を受けるからです 。
今回の研究では、p-tau217の数値に影響を与える「意外な要因」についても詳しく調査されました 。
その代表的なものが、肥満度(BMI)、腎機能(eGFR)、そして善玉コレステロール(HDL)の値です 。
例えば、腎臓の働きが低下していると、血液中のp-tau217がうまく排泄されず、脳の状態とは関係なく数値が高めに出てしまう可能性があります 。
また、BMI(体格指数)が低い、つまり痩せすぎている場合も数値が変動することが示唆されています 。
これは検査が使えないという意味ではなく、数値を正しく解釈するためには、これら全身の健康状態を併せてチェックすることが重要だということです 。
私たちは単に血液のデータを見るだけでなく、お一人おひとりの持病や体格を考慮した上で、総合的に診断を行う責任があります 。
今後の医療では、この血液検査を「入り口」として使い、必要に応じてより詳細な精密検査を組み合わせるスタイルが主流になるでしょう 。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
今回は、より簡便な血液バイオマーカーによるアルツハイマー病の診断について解説しました。
医療鑑定研究会では、遺言能力の鑑定を数多く担当してきた実績があります。
まずはお気軽にご相談ください。
執筆責任者:医療鑑定研究会 代表医師 中嶋 浩二

【略歴】
2002年 大分医科大学(現 大分大学)医学部医学科卒業
2002年 大分医科大学(現 大分大学)医学部附属病院
2003年 Baskent University Ankara Hospital
2006年 昭和大学(現 昭和医科大学)藤が丘病院
2015年 東京警察病院
2018年 牧野リハビリテーション病院(現職)
【資格】
日本専門医機構脳神経外科専門医
日本職業・災害医学会認定労災補償指導医
日本脳卒中学会専門医
日本認知症学会専門医
日本認知症学会指導医
厚生労働省認知症サポート医養成研修終了
日本プライマリ・ケア連合学会認定医 等




