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認知症のMRI検査|専門医が教える基本と注意点

  • 執筆者の写真: 医療鑑定研究会 中嶋浩二
    医療鑑定研究会 中嶋浩二
  • 13 分前
  • 読了時間: 6分
医学鑑定 後遺障害
MRIスキャンによる脳の画像が表示されている医学的研究の一環。

認知症の診断において、MRI検査は非常に重要な役割を果たしています。


私は認知症専門医として、MRI検査は認知症の診断プロセスにおいて欠かせない検査の一つだと考えています。


MRIとは「Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)」の略で、強力な磁場と電波を使って体内の様子を詳細に撮影する検査方法です。


X線を使うCT検査とは異なり、放射線被ばくがないという大きなメリットがあります。


認知症の診断においてMRI検査が重要なのは、脳の萎縮の程度や場所、血管の状態、腫瘍や出血などの病変を高い精度で確認できるからです。


特に、アルツハイマー型認知症では海馬という記憶を司る部分の萎縮が特徴的に見られますし、血管性認知症では脳梗塞や脳出血の痕跡を確認することができます。


今回は認知症専門医の視点から、認知症のMRI検査について詳しく解説していきます。検査の目的や重要性、どのような疾患が発見できるのか、そして検査の流れなどについてお話しします。認知症の早期発見・早期対応のために、ぜひ参考にしてください。



認知症診断におけるMRI検査の目的と重要性


■ 脳の萎縮パターンを詳細に観察できる


認知症の種類によって、脳のどの部分が萎縮するかというパターンが異なります。


おおまかに例をあげると、アルツハイマー型認知症では、初期段階から海馬という記憶を司る部分の萎縮が見られます。


前頭側頭葉変性症では、名前の通り前頭葉や側頭葉の萎縮が目立ちます。


もちろん、アルツハイマー型認知症も前頭側頭葉変性症も、いろんな型があるため、それぞれで萎縮のパターンは異なります。


MRI検査ではこうした萎縮パターンを詳細に観察することができるため、認知症の種類を鑑別する上で非常に重要な情報を提供してくれます。


■ 他の原因疾患を除外できる


認知症の症状は、脳腫瘍や慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などの疾患でも起こることがあります。これらは「治療可能な認知症」と呼ばれることもあり、適切な治療によって症状が改善する可能性があります。


MRI検査では、こうした疾患の有無を確認することができるため、認知症の鑑別診断において欠かせない検査となっています。

(※頭部CT検査で鑑別できる場合もあります。)



『認知症疾患診療ガイドライン2026』(医学書院)でも、認知症の診断と鑑別において、これら「治療可能な認知症」の鑑別は必須とされています。


実際、私の臨床経験でも、物忘れを主訴に来院された患者さんのMRI検査で慢性硬膜下血腫が見つかり、手術によって症状が改善したケースを何度も経験しています。



MRI検査で分かる主な認知症の種類と特徴


MRI検査では、認知症の種類によって特徴的な所見が見られます。主な認知症の種類とMRI所見の特徴について解説します。



アルツハイマー型認知症のMRI所見


アルツハイマー型認知症は、認知症全体の半数以上を占める最も多いタイプです。


『認知症疾患診療ガイドライン2026』(医学書院)では、アルツハイマー型認知症の画像所見の特徴として、3つ挙げられています。そのうちの1つがMRIの特徴的な所見です。


具体的には、記憶の中枢である海馬とその周辺(内側側頭葉)の萎縮が見られます。海馬の萎縮は、アルツハイマー型認知症の初期段階から見られることが多く、病気の進行に伴って萎縮も進行していきます。


ただし、脳萎縮が軽度にとどまることもあり、MRI検査だけでは診断が難しいケースもあります。そのような場合は、SPECTやPETなどの機能画像検査を組み合わせて総合的に診断することになります。


アルツハイマー型認知症の画像所見の特徴として、


「SPECT、FDG-PETでの側頭葉、頭頂葉、帯状回後部、楔前部の血流と糖代謝の低下」

「PETにおけるアミロイドβ蛋白とタウ蛋白の蓄積」


も『認知症疾患診療ガイドライン2026』(医学書院)ではあげられています。



血管性認知症のMRI所見


血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって引き起こされる認知症です。

日本では、アルツハイマー型認知症の次に多い認知症といわれています。


その血管性認知症で最も多いタイプである「小血管病性認知症」では、頭部MRI所見として、深部白質や基底核、視床などの部位に多発する小梗塞(ラクナ梗塞)、白質の広範な虚血性変化(白質病変)、微小出血などが特徴的です。



前頭側頭葉変性症のMRI所見


前頭側頭葉変性症は、その名のとおり、前頭葉と側頭葉を中心とする神経細胞の変性・脱落により、「著明な行動異常」「言語障害」を特徴とする認知症です。



臨床では、次の3つの病型に分類されます。


① 行動異常型前頭側頭型認知症

②意味性認知症

③進行性非流暢性失語症


MRIの特徴的な所見も、病型によって異なります。


①行動異常型前頭側頭型認知症では、前頭葉や側頭葉前部に萎縮を認めます。


②意味性認知症では、側頭葉のなかでも「下側頭回」の「前部」に優位な萎縮を認めます。


③進行性非流暢性失語症では、左前頭葉後部から島に目立つ萎縮を認めます。


前頭側頭葉変性症を画像のみでは診断できませんが、前頭葉と側頭葉の萎縮パターンを確認することは、診断基準にも含まれており、とても重要です。


レビー小体型認知症のMRI所見


レビー小体型認知症では、アルツハイマー型認知症のような海馬を含む内側側頭葉の萎縮が目立たず、大脳全体の萎縮も軽いことが特徴といえます。


つまり、レビー小体型認知症には、特徴的といえる脳萎縮パターンがないのです。


レビー小体型認知症は、脳血流SPECTやFDG-PETで、後頭葉の血流・糖代謝が低下する例が多いといわれています。


MRIではなく、脳血流SPECTやFDG-PETのほうが診断の役に立つのです。


このように、認知症の診断において、MRI検査が万能ではないこともぜひ覚えておいてください。


医学鑑定 後遺障害


まとめ:認知症のMRI検査で分かること・分からないこと


最後に、認知症のMRI検査で分かることと分からないことをまとめておきます。


MRI検査で分かることとしては、脳の萎縮の程度や場所、血管の状態、腫瘍や出血などの病変の有無などがあります。


これらの情報から、認知症の種類や進行度、他の疾患の可能性などを評価することができます。


一方、MRI検査だけでは分からないこととしては、認知機能の程度や日常生活への影響、将来的な進行予測などがあります。また、全ての認知症がMRI検査で異常所見を示すわけではなく、特にアルツハイマー型認知症の初期段階やレビー小体型認知症では、明らかな異常が見られないこともあります。


認知症の診断は、MRI検査だけでなく、問診、神経学的診察、認知機能検査、血液検査、場合によってはSPECTやPETなども組み合わせた総合的な評価が必要です。




最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

この記事が少しでも皆さんの心に届き、 認知症の診断におけるMRI検査ついての正しい理解が社会に広まることを強く願っています。



 執筆責任者:医療鑑定研究会 代表医師 中嶋 浩二


医療鑑定研究会 中嶋浩二医師

【略歴】

2002年 大分医科大学(現 大分大学)医学部医学科卒業

2002年 大分医科大学(現 大分大学)医学部附属病院

2003年 Baskent University Ankara Hospital

2006年 昭和大学(現 昭和医科大学)藤が丘病院

2015年 東京警察病院

2018年 牧野リハビリテーション病院(現職)


【資格】

日本専門医機構脳神経外科専門医

日本認知症学会専門医

日本認知症学会指導医

日本職業・災害医学会認定労災補償指導医

日本脳卒中学会専門医

厚生労働省認知症サポート医養成研修終了 等





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