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気管切開術後早期のトラブルによる低酸素脳症を回避する ―医療事故調査・支援センターの提言より―


(2020.3.1)

代表医師の中嶋です。


医療事故の案件として,たびたびご相談をお受けする低酸素脳症ですが,その原因はさまざまです。


気管切開術後早期のトラブルが原因で,低酸素脳症に陥るケースもあります。


医療事故調査・支援センターは,2018年6月,医療事故の再発防止に向けた提言(第4号)として,「気管切開術後早期の気管切開チューブ 逸脱・迷入に係る死亡事例の分析」(以下「センター提言」といいます。)を公表しました。


今回は,このセンター提言の内容を解説します。

なお,全文は,インターネットでダウンロードできます。



「逸脱」と「迷入」の違い


まず,用語の区別について,説明します。

「逸脱」とは,気管切開チューブが抜けかかっている,または,完全に抜けている状態です。この場合,外見上も,気管切開チューブが,皮膚から明らかに浮いているため,容易に判断できます。

一方,「迷入」とは,気管切開チューブの先端が,気管内ではない別の場所(ほとんどは皮下組織)に挿入されている状態です。この場合,外見上は,気管切開チューブはしっかりと皮膚に密着して,いかにも問題なさそうに見えるため,注意が必要です。



気管切開術後早期とは,いつ頃までのこと?


気管切開術直後は,気管切開孔が安定していない,つまり,まだ道が出来上がっていないため,仮に,気管切開チューブが逸脱すると,道がわからなくなってしまいます。

その時期は,気管切開術後,約2週間です。

したがって,気管切開術後早期の「早期」とは,約2週間を指し,この期間は,とくに気管切開チューブの逸脱に注意しなければなりません。



どのようなときに逸脱する?


気管切開チューブが,人工呼吸器の回路や,酸素チューブに接続されている場合,そのまま患者移動や体位変換を行うと,気管切開チューブが引っ張られてしまいます。その結果,気管切開チューブが逸脱することもあります。

そのため,センター提言では,気管切開チューブに接続中の人工呼吸器回路や器具を可能な

限り外してから,患者移動や体位変換を実施するよう注意を促しています。


気管切開チューブの逸脱・迷入時はどうする?

気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入における再挿入は,困難であり,危険を伴います。センター提言で報告されている複数の事例でも,再挿入に固執したことが原因で,死に至っています。

脳保護の観点からも,まずは,迅速かつ確実に換気を行うことが重要です。

気管切開チューブの逸脱・迷入を発見するのは,多くの場合,患者のケアを担当するスタッフ(看護師等)です。

気管切開チューブからの強制換気は,皮下気腫,縦隔気腫,緊張性気胸を引き起こす危険があるため,絶対に避けるべきです。

看護師は,経口でのバッグバルブ換気を行いながら,医師の到着を待ちます。

経口でのバッグバルブ換気は,すべての看護師が身に着けておくべき基本的な蘇生処置です。

医師も,やはり,気管切開チューブの再挿入に固執することなく,経口挿管による確実な気道確保を行います。

このとき,患者の容態は一刻を争います。当然,その場にいる医師のなかで,経口挿管に最も習熟した医師が迅速に行うべきでしょう。


医療スタッフの教育が患者の命を救う

ここまで述べてきたように,気管切開術後早期の患者に対しては,特別な注意が必要です。気管切開チューブの逸脱・迷入を防ぐ方法や,それらの事態が発生したときの対処法については,患者のケアを担当するスタッフ全員が十分に認識できるよう,教育を行う必要があります。


以上です。


これからも,弁護士の皆様の役に立つと思われる医学的知見を紹介していきます。

ご意見・ご質問は,本サイトのお問い合わせフォームよりお寄せ下さい。


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