(2022.8.1)
代表医師の中嶋です。
今回は神経内視鏡治療の3回シリーズ最後として、
脳腫瘍の神経内視鏡治療を取り上げました。
脳の最深部にある頭蓋底腫瘍や下垂体腫瘍に対して、経鼻神経内視鏡治療を行うことで患者さんの負担を激減させることが可能になりました。
患者さんのメリットも大きい治療ですが、脳出血に対する神経内視鏡下血腫除去術よりも、狭い術野での繊細な操作が求められる非常に専門性の高い手術です。
経鼻的神経内視鏡治療について
経鼻的神経内視鏡治療とは、鼻に内視鏡を入れ、そこから脳の下面、とくに下垂体の近くにある腫瘍を摘出する手術です。
いままでは摘出に際し、大きく開頭したり、頬の骨をカットしたりする必要のあった腫瘍に対して、鼻から手術ができるようになりました。
これにより、外からわかるような手術痕を残すことなく腫瘍を摘出することができるようになったのです。
手術の適応としては、下垂体腺腫や前頭蓋底部の髄膜種などの良性脳腫瘍、脊索腫のような悪性腫瘍が対象です。
また、脳動脈瘤に関しても場所や形など症例を選んで動脈瘤頚部クリッピング術を内視鏡下で行っている報告もあり、今後適応が拡大されるかもしれません。
経鼻的神経内視鏡治療の手術方法
患者さんに全身麻酔がかかった後、十分に消毒した鼻の中に4㎜程の硬い内視鏡と手術器具を入れます。
まず鼻の中の処置を行い、手術を行うのに十分な手術器具の通り道を作ります。
次に、鼻の穴の処置が終わった後、頭蓋内と鼻を交通させるために脳と鼻との間を隔てる骨をドリルで削ります。
その後、脳を包んでいる膜(硬膜)を切り開くことで、鼻から頭蓋内の手術が可能になります。
内視鏡を用いて腫瘍を摘出したりクリップをかけたりするなど、目的とした治療を行います。
頭蓋内の処置が終わった後は硬膜を縫い合わせ、さらに筋膜などを留置してくるなどの処置を行い、術後の感染や髄液漏などを予防します。
鼻腔内での操作が終わった後、鼻のなかにパッキングを行い手術は終了です。
手術直後は鼻での呼吸ができない状態になりますが、術後経過によってそのパッキングを外すと、手術を行ったかどうかは外からはわからない状態となります。
経鼻的神経内視鏡治療のメリット、デメリット
内視鏡を適切な位置に置くことで視認性が上がり、非常に細い血管や神経などの温存、手術安全性の向上が期待できます。
また開頭手術では摘出が極めて困難な症例に対して、角度がついたカメラを使用することで、開頭術では確認できなかった死角の部分の腫瘍を取り残すことなく全て摘出することも可能になっています。
また脳を損傷させるリスクなく腫瘍に到達できますので、症例を選べば腫瘍以外の脳には全く触れることなく、低侵襲な手術ができます。
一方で、手術器具2本とカメラを鼻の穴に入れて手術を行うことになりますので、非常に手術操作はやりにくくなります。
また開頭手術と異なり2次元の画面を見ながら手術する必要があるので、遠近感をつかみにくく、手術手技を習得するまでには時間がかかります。
手術器具の操作を邪魔しないような位置にカメラを置くような工夫など、前回解説した血腫除去よりも手術難易度はさらに高く、内視鏡を用いた腫瘍摘出は最難関の内視鏡技術が必要となるといえるでしょう。
経鼻的神経内視鏡治療のメリット、デメリット
内視鏡を適切な位置に置くことで視認性が上がり、非常に細い血管や神経などの温存、手術安全性の向上が期待できます。
また、開頭手術では、摘出が極めて困難な症例に対し、角度がついたカメラを使用することで、開頭術では確認できなかった死角の部分の腫瘍を取り残すことなく全て摘出することも可能です。
加えて、脳を損傷させるリスクなく腫瘍に到達できるので、症例を選べば腫瘍以外の脳には全く触れることなく、低侵襲な手術ができます。
一方で、手術器具2本とカメラを鼻の穴に入れて手術を行うので、非常に手術操作はやりにくくなります。
さらに、開頭手術と異なり2次元の画面を見ながら手術する必要があるので、遠近感をつかみにくく、手術を習得するまでに時間がかかります。
手術器具の操作を邪魔しないような位置にカメラを置くような工夫など、前回解説した血種除去よりも手術難易度はさらに高く、内視鏡を用いた腫瘍摘出は最難関の内視鏡技術が必要となるといえるでしょう。
まとめ
今回は経鼻的神経内視鏡手術について解説しました。
鼻という非常に小さい穴に手術器具・内視鏡カメラを挿入して手術が行われるために手術難易度は非常に高いです。
熟練した指導医からの十分なトレーニングを受けた術者のみができる手術にはなりますが、その患者さんへの恩恵は大きく、今後も広く行われていくことが期待される治療です。
今後も日々情報をアップデートし、最新の知見も含めてわかりやすくお伝えしていきます。
Comments