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TIAは入院?それとも帰宅?


救急外来を受診した患者さんでTIAが疑われたにもかかわらず,その日は帰宅となり,後日,脳梗塞を発症して後遺障害が残った場合,救急外来での担当医の対応が適切であったのかどうかが問題となります。

 TIA(一過性脳虚血発作)は,従来,「24時間以内に消失する局所的な脳,または網膜の虚血症状のこと」と定義されてきました。しかし,2009年,米国心臓協会 (AHA) と米国脳卒中協会 (ASA) はTIAの定義を変更し,

「急性期脳梗塞を伴わない,局所的な脳,脊髄,または網膜の虚血によって生じる神経機能障害の一過性エピソードである」

としました。

 「急性期脳梗塞を伴わない」という文言が加わったのには理由があります。

 かつての定義「24時間以内に消失する局所的な脳の虚血症状」では,約半数がMRIの拡散強調画像で脳梗塞の所見が認められることがわかったからです。あと,新しい定義では,「24時間以内」という文言が消えていますが,これも「24時間」の根拠が乏しいためとされています。

 さて,患者さんの症状からTIAが疑われる場合,医師は患者さんを入院させたほうがよいのか,という問題に直面します。なぜなら,TIA後には脳梗塞を発症する危険があるからです。この問題について,「脳卒中治療ガイドライン2015」では,

「ABCD2スコアをはじめとした予測スコアの使用が勧められる」

と記載されています。

 ABCD2スコアとは,TIA患者さんの脳梗塞発症リスクを層別化しようという目的で作られたもので,2007年に有名な医学雑誌Lancetで発表されました。

 具体的には以下のA,B,C,D (2つ)を評価します。

A=Age (年齢) 60歳以上:1点

B=Blood pressure (血圧) 

     収縮期血圧 140 mmHg以上または拡張期血圧90以上:1点

C=Clinical features (臨床症状)

     片側の運動麻痺:2点  麻痺を伴わない言語障害:1点

D=Duration (持続時間)

     60分以上:2点  10~59分:1点

D=Diabetes (糖尿病) 糖尿病がある:1点

 合計の点数によって,2日以内,7日以内,90日以内の脳梗塞発症リスクを次のように報告しています。

0~3点:低リスク→ 2日以内:1.0%,7日以内:1.2%,90日以内:3.1%

4,5点:中等度リスク→ 2日以内:4.1%,7日以内:5.9%,90日以内:9.8%

6,7点:高リスク→ 2日以内:8.1%,7日以内:11.7%,90日以内:17.8%

 脳卒中治療ガイドライン2015では,ABCD2スコア4点以上は,速やかな病態評価と治療が必要であるが,十分な科学的根拠がない,としています。

 また,最近では,ABCD2スコア単独の評価では,脳梗塞のリスク評価において不十分であるとされ,MRIの拡散強調画像の有用性が指摘されています。ABCD2スコア4点未満かつMRI拡散強調画像で脳梗塞所見がない場合は,7日以内の脳梗塞を感度100%で除外できるという報告もあります。

 以上をまとめると,一過性の片麻痺や言語障害を発症し,TIAが疑われた場合,

「ABCD2スコアを評価して,4点以上の場合は入院の上,できるだけ早期にMRI拡散強調画像を実施する。」

という対応が望ましいと考えます。

 今後も弁護士の皆様にとって有用と思われる情報を発信していきたいと思います。よろしくお願いいたします。


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