
(2022.10.13)
代表医師の中嶋です。
今回は【Alzheimer 型認知症の診断にアミロイドPET検査は有用か】というテーマを解説したいと思います。
■アミロイド PET検査における、陽性判定の種別ごとの割合について
アミロイド PET 検査は、
Alzheimer 型認知症で約 98%、
軽度認知障害 mild cognitive Impairment(MCI)は約 68%、
健常高齢者の33%で陽性です。
Alzheimer 型認知症の発症前からアミロイド β(Aβ)が蓄積することは多数の研究で示され ています。
生前から脳アミロイド蓄積量を推定できるアミロイド PET 検査は、
臨床研究においては必須であり、
NIA-AA 基準や IWG-2 AD 先端研究の診断基準では必須項目の 1 つとなっています。
アミロイド蓄積は 50 歳で 10.4%、90 歳で 43.8%の健常高齢者で認められており、
また、Lewy 小体型認知症などAlzheimer型認知症以外の認知症疾患でも認められます。
したがっ て、アミロイド PET は
Alzheimer 型認知症と非Alzheimer 型認知症の鑑別に有用です。
ただし、臨床診断にアミロイド PETを用いる際には、
患者選択や結果の解釈に注意が必要とされ、
さらに、同意・開示・カウンセリング・教育・心理サポートの必要性も強調されています。
■アミロイド PETを診療に用いるうえでの適正使用の基準について
米国核医学会と国際 Alzheimer 協会は合同で、
アミロイド PETを診療に用いるうえでの世界初の適正使用の基準を2013 年に作成しました。
アミロイド PET の使用に求められることとして、
①認知症の専門家が患者を評価して客観的な認知機能障害を認めること。
②専門家がすべ ての利用可能な臨床所見,検査所見を検討して,障害の原因が不明であり、Alzheimer 型認知症やその前駆状態で説明が可能なこと。
③そして脳アミロイドの有無が診断の確定に役立ち、治療計画やケアを変化させると
専門家が結論づけること。
以上があげられており、実際の適用例と不適用例もあげています。表1)

表1 | 米国核医学会と国際 Alzheimer 協会によるアミロイド PET の適正使用の基準
さらに追加の論文で
①認知症専門家の定義と、専門家が患者のアミロイド PET の必要性についての書類を作成すること。
②アミロイド PETが必要な軽度認知障害群は限られること。
③アミロイド PET 適正使用のための教育プログラムを開発すること。
以上について述べています。表2)
イタリア共同ワーキンググループのアミロイドイメージングの臨床使用勧告では、
原因不明の客観的な認知機能障害をもち、
結果が診断の正確性と治療に役立つ患者のみを対象とするように定めています。
日本では2015年4月に定められた
日本核医学会、日本認知症学会、日本神経学会の合同ワーキンググループによる
アミロイドPETイメージング剤合成装置の適正使用ガイドラインに準拠すべきであると定めています。表 2).
これによると適切な使用例は
①臨床症状が非定型的であり、適切な治療のために確定診断を要する認知症症例と
②発症年齢が非定型的 (65 歳未満の発症)であるため、適切な治療のために確定診断を要する認知症症例とされ、
軽度認知障害は推奨されないとされました。

表2| アミロイド PET イメージング剤合成装置の適正使用ガイドライン
〔厚生労働省研究班「アミロイドイメージングを用いたアルツハイマー病発症リスク予測法の実用化に関する多施設臨床研究」
アミロイド PET イメージング剤合成装置の適正使用ガイドライン,第 1 版.2015.
より一部改変〕
■まとめ
・アミロイド PET 検査は、Alzheimer型認知症で約 98%、
軽度認知障害 mild cognitive Impairment(MCI)は約 68%、健常高齢者の 33%で陽性である。
・アミロイド PET 陰性は非 Alzheimer 型認知症の鑑別に有用である。
・NIA-AA 基準や IWG-2 Alzheimer 病先端研究 診断基準では、脳アミロイド蓄積のバイオマーカーとして必須項目となっている。
・臨床研究 への参加には同意が必要で、一般の臨床的使用は適正使用ガイドラインに準拠すべきである。
・アミロイド PET 検査はわが国では保険適用外検査である。
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今回は【Alzheimer 型認知症の診断にアミロイドPET検査は有用か】というテーマについて
解説をさせて頂きました。
この記事が、少しでも皆さまのお役に立つことを願っております。
参考文献:一般社団法人日本神経学会 認知症疾患診療ガイドライン2017
第6章 Alzheimer型認知症より抜粋
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