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脳外傷による高次脳機能障害で出現するアパシーとは?


医学鑑定 交通事故

(2021.12.5)


代表医師の中嶋です。


今回は、アパシーについて解説したいと思います。


記憶障害や注意障害といった他の高次脳機能障害の症状と比較して、アパシーは聞き慣れない症状ではありませんか?


アパシーは、意欲・発動性の低下のことです。

アルツハイマー型認知症のような他の疾患でもみられます。


医学的に明確な定義はありませんが、


「目的に向けられた随意的で意図的な行動の量的な減少」


「情念が無い状態であり、一般的には正常ならば当然何らかの感動や興味を起こすべき環境に対して感情を示さない状態のこと」


などといわれています。


交通事故で前頭葉に損傷を負った患者さんでは、このアパシーを認めることが少なくありません。

ただ、非常に残念なことに、患者さん自身はもちろん、ご家族ですら、このアパシーに気づいていないことがあります。


たしかに、高次脳機能障害の症状は、運動麻痺や言語障害と比較してわかりにくいのが特徴とされ、特にアパシーは事故後のさまざまなダメージが残っていて元気がないだけ、と勘違いされがちです。


そのため、交通事故後の急性期には医療従事者であっても見逃すことがあります。


そして、全身の状態が落ち着いたころ、事故前には活動的だったのに、事故後いつまで経っても、一日中ベッドの上で無為な生活を送るので、ご家族が心配してようやく気づかれるのです。



医学鑑定 交通事故


アパシーは次の3つのタイプに分類できます。

①情動・感情処理と関連するアパシー

②認知機能処理と関連するアパシー

③自己活性化と関連するアパシー


交通事故による前頭葉の広範な損傷では、自分で行動や思考を開始することが困難なタイプのアパシー(上記の③)を認めます。


これを自己賦活障害によるアパシーともいい、3つのタイプのなかで中核的かつ最も重度とされています。


最後に、アパシーで注意すべき点を3つあげます。


①自己賦活障害によるアパシーの患者さんは、自ら行動を開始できませんが、その一方で、他者からの誘導があれば行動を開始できるので、適切な対応が必要です。


②脳外傷による情動コントロールの障害として、非常に怒りっぽくなっている患者さんでも、何も刺激がないときは、むしろアパシーを認めることがあります。


③アパシーは、「うつ」との鑑別が必要です。アパシーの患者さんでは、うつとは異なり、悲哀感を示すことはほとんどありません。もし、うつであれば、抗うつ剤の適切な服用によって、改善が期待できます。


以上、今回は、脳外傷による高次脳機能障害の症状、アパシーについて解説しました。

この記事が、少しでも皆さまのお役に立つことを願っております。


参考資料

一般社団法人日本高次脳機能障害学会教育・研修委員会編:頭部外傷と高次脳機能障害、新興医学出版社、2018

蜂須賀研二:リハビリテーション医療におけるアパシーとその対策.高次脳機能研究 2014 34 184-192

酒井浩:前頭葉内側面損傷によって自発性低下と記憶障害を呈した事例に対する臨床的評価および介入.高次脳機能研究 2018; 38: 330-346

大東祥孝:頭部外傷と高次脳機能障害.脳外誌 2009; 18: 271-276


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