【専門医が解説】労災で頭部外傷を受けたら?高次脳機能障害の症状と認定のポイント
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【専門医が解説】労災で頭部外傷を受けたら?高次脳機能障害の症状と認定のポイント

  • 執筆者の写真: 医療鑑定研究会 中嶋浩二
    医療鑑定研究会 中嶋浩二
  • 2 日前
  • 読了時間: 7分
労働災害の医学鑑定

今回は皆さんに、知っておいていただきたい大切なテーマについてお話しします。


仕事中の思わぬ事故で頭を強く打ってしまうことは、決して珍しいことではありません。

しかし、その後に隠れているかもしれない重大なリスクについてご存知でしょうか。


それが、今回詳しく解説する「頭部外傷」から引き起こされる「高次脳機能障害」です。

そして、これらが仕事中の事故で起きた場合の「労災認定」についても触れていきます。


一見普通に見えるのに、なぜか以前と違う。

そんな見えない障害の要点についてお伝えします。

ぜひ最後までじっくりと読んでみてください。



頭部外傷と高次脳機能障害の関係:注意すべき症状とは


建設現場での転落や営業中の交通事故など、仕事中に頭部外傷を負うリスクは様々です。

頭蓋骨の中で脳が激しく揺さぶられると、神経細胞が広範囲に傷ついてしまいます。


命に別状がなく、手足の麻痺など分かりやすい後遺症がない場合、安心してしまいがちです。

しかし、脳の高度な機能を司る部分がダメージを受けていると問題が起こります。


これが「高次脳機能障害」と呼ばれるもので、専門医として最も注意を払う病態の一つです。


頭蓋骨内部は滑らかではなく、脳が接する部分には硬い骨の凹凸が存在しています。

事故の衝撃で脳が激しく揺さぶられると、骨に強く打ち付けられて脳がダメージを受けてしまうのです。


「びまん性軸索損傷」という、脳の神経線維が広範囲に断裂する重大な現象も起こります。

強い回転の力が加わると、脳全体に微細で目に見えない傷が無数に生じてしまいます。


では、具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。

代表的なものをいくつか挙げます。


一つ目は「記憶障害」です。

新しいことを覚えられず、何度も同じ質問を繰り返します。


二つ目は「注意障害」です。

一つのことに集中できず、周囲のちょっとした刺激で気が散ります。

仕事でミスを連発したり、同時に複数の作業をこなすことが困難になったりします。


三つ目は「遂行機能障害」です。

計画を立てて、段取りよく実行することができなくなります。

トラブルが起きるとパニックになり、どう対処していいか分からなくなります。


四つ目は「社会的行動障害」です。

感情のコントロールが効かなくなり、突然怒り出します。

空気が読めない不適切な発言をして、大切な人間関係を壊してしまうこともあります。


これらが労災事故の後に現れた場合、周囲は「性格が変わってしまった」と誤解しがちです。

しかし、これは性格の問題ではなく、頭部外傷による症状の可能性があるのです。



労災認定の壁を理解する:頭部外傷による高次脳機能障害を証明するために

仕事中の頭部外傷が原因で高次脳機能障害になった場合、労災保険の補償対象となります。

しかし、この労災認定を受けるためには、非常に高いハードルを越えなければなりません。


外見からは障害の程度がわかりにくく、客観的な医学的証明が非常に難しいからです。

「仕事への意欲がなくなっただけではないか」と審査の段階で疑われることすらあります。


申請で重要なのは、症状固定の時期を的確に見極め、適切なタイミングで手続きを行うことです。 脳の回復がこれ以上見込めない状態になるまでには、通常、半年以上の期間を要します。

その間は焦らずリハビリテーションを続けながら、必要な医学的証拠をしっかりと集めていきます。


労災認定で最大の鍵は、客観的な医学的証拠の提示です。

私たち専門医はMRIやCTなどの画像診断を用い、脳の微小な損傷を丁寧に探し出します。

事故直後の画像だけでなく、事故から時間の経過した画像も参照して脳の萎縮なども確認します。


しかし最新の画像診断をもってしても、日常生活における具体的な支障の程度までは証明できません。

そこで必要になるのが、詳細な「神経心理学検査」の実施なのです。


記憶力や注意力を数値化するテストを何種類も組み合わせて行います。

これにより、患者さんの脳のどの機能が、どれくらい低下しているかを客観的に見極めるのです。


家族や同僚からの「日常的な報告」も労災認定には不可欠です。

具体的なエピソードが必要です。

事故前と比べてどのような行動の変化があったか、ノートに書き留めましょう。


「火を消し忘れるようになった」「約束の時間を守れなくなった」といった具体的な記録です。 生活上の困難さが障害によるものだと証明するための、具体的な裏付けとなるのです。


医師へ診断書を依頼する際、日々のメモを提示することでより的確な症状を記載してもらえます。

労災申請は複雑なため、専門の弁護士や社労士への相談も前向きに検討してみてください。


労災が認定されれば、治療費の自己負担がなくなるだけでなく、休業補償も手厚く受けられる可能性があります。 経済的な不安を取り除くことは、安心して治療に専念するためには不可欠です。


労働災害の医学鑑定

高次脳機能障害の治療と労災サポート:頭部外傷から職場復帰への道のり


高次脳機能障害と診断された後、どのように治療を進め、社会生活へ戻っていくのでしょうか。 ダメージを負った脳を回復させる薬剤は、残念ながら実用化されていません。


しかし脳には、残された細胞が新たなネットワークを作る「可塑性」という素晴らしい力があります。

潜在的な回復力を最大限に引き出すのが、専門的なリハビリテーションの大きな役割です。


リハビリテーションは理学療法、作業療法、言語聴覚療法など、患者さんの具体的な症状に合わせてオーダーメイドで行います。

失われた機能を補う「代償手段」を獲得することも、生活を立て直すための重要な訓練です。


記憶障害がある場合は、メモ帳やスマートフォンのアラーム機能を活用する訓練をします。 注意障害がある場合は、作業環境から気が散る原因を排除し、集中できる環境を作ります。


また、リハビリテーションを長期に続けるためにも、労災保険の各種サポート制度をフル活用することが大切です。治療費の支援や、仕事を休んでいる間の休業補償給付は生活の大きな支えとなります。


障害が残った場合でも、補償給付を受けることで将来に向けた経済的な基盤を確保できます。

職場復帰の際は就労支援機関などと連携し、無理のない段階的な復帰計画を立てましょう。


最初は短時間勤務から始め、業務内容も負担の少ないものに調整するよう会社と交渉します。 主治医の詳細な意見書があれば、会社側に対して具体的な配慮を求めやすくなるでしょう。


職場の人に見えない障害の特性を正しく理解してもらうことも欠かせません。

産業医とも情報共有を行い、無理なく働き続けられるようなサポート体制を職場に求めましょう。



後遺症に悩んでいる方は、遠慮なく医師、弁護士、社労士といった専門家に相談してみてください。再び笑顔で社会生活を送れるよう全力でサポートしてくれるはずです。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

この記事が少しでも皆さんの心に届き、 頭部外傷と高次脳機能障害、そして労災についての正しい理解が社会に広まることを強く願っています。



 執筆責任者:医療鑑定研究会 代表医師 中嶋 浩二


医療鑑定研究会 中嶋浩二医師

【略歴】

2002年 大分医科大学(現 大分大学)医学部医学科卒業

2002年 大分医科大学(現 大分大学)医学部附属病院

2003年 Baskent University Ankara Hospital

2006年 昭和大学(現 昭和医科大学)藤が丘病院

2015年 東京警察病院

2018年 牧野リハビリテーション病院(現職)


【資格】

日本専門医機構脳神経外科専門医

日本認知症学会専門医

日本認知症学会指導医

日本職業・災害医学会認定労災補償指導医

日本脳卒中学会専門医

厚生労働省認知症サポート医養成研修終了 等





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